Sponsored Links

電車旅で信州湯田中温泉方面へ向かう
まずはJR長野駅まで行き、そこから長野電鉄の特急に乗り換えて終点の「湯田中温泉」まで行きました。
このとき乗った長野電鉄の特急電車の名前は“スノーモンキー号”、かつては“成田エクスプレス”として走行していた車両が名前を変えて活躍していました。
若かりし頃に大きなスーツケースを抱えて海外へ向かうときワクワクしながら乗ったこの車両に乗り、今回は歴史ある温泉地を目指す38分間の電車旅の始まりです。
長野駅を出発してどんどん進んで行くと、次第に視界が開いてきました。
線路脇には広大に広がる葡萄やリンゴの畑を見渡せるようになり、遠くには北信五岳(ほくしんごがく)と呼ばれる雄大な山々が見えてきました。
信州の美しく豊かな自然を見つめているだけで心は癒され、車窓からの景色に見飽きることは決してありません。
やがて電車が急勾配にさしかかった頃に速度ダウン、ほどなく湯田中駅に到着しました。
電車がホームに到着するとご当地ソングが流れてきて観光客歓迎ムード満天、法被を着た旅館のスタッフの方々が次々と出迎えてくれます。
駅の構内には採れたての野菜や果物が販売されていたり、一角には温泉や足湯もあり、地域の人に大切に守られているとても趣のある駅でした。
宿泊した旅館の大将からお伺いしたのですが、この湯田中温泉がある山ノ内町出身の有名人といえばかつて“ものまね四天王”と呼ばれたうちの1人、あの清水アキラさんがいらっしゃるそうです。
降雪量が多いこの地域で幼少のころから鍛えられスキーの腕前は国体級だったとか、天は二物を与えることもあるのですね。
上林温泉から湯道遊歩道を歩く
湯田中温泉からは長電バスに乗り15分、「上林(かんばやし)温泉」にて下車です。
今回は上林温泉で宿泊予定でしたので、一度宿に立ち寄り手荷物を預かってもらいました。
身軽になったところで、ここからは「湯道遊歩道」と呼ばれる林道を徒歩で35分くらい行き、その先に目指す「地獄谷野猿公苑」があります。
この遊歩道は整備されているため平坦な箇所が多いのですが、所々ゆるい登り坂や下り坂がありました。
私が行ったときはどうやら前日は雨だったらしく、所々ぬかるみがありました。
林道に沿って農業用水の水道管が敷設されていて、地域住民にとっては大切な林道のようです。
小鳥のさえずりが森の中に響き渡り、きれいな空気をいっぱい吸いながら進むこの散策は、まさに最高の森林浴です。
しかし正直、「クマが出没しませんように・・・。」と祈りながら進む緊張感もあります。
“もしもクマに出くわしたら”、夫か私のどちらかがクマ対応をして、どちらかは一目散に逃げることにしよう、さてどちらの役を担当したいか?と議論して歩くうち、目的地に到着しました。
地獄谷温泉野猿公苑
地獄谷温泉がある地域は標高850m、冬の寒さが厳しく積雪は1mを超えるそうです。
この厳しい環境に適応し群れを作って暮らしている野生のニホンザルたち、ここではそんな彼らの生態を間近で見られることが最大のポイントだと思います。
“公苑内に足を踏み入れる=野生の猿たちのテリトリーにお邪魔する”という感じで、ここでは人間が猿たちのルールを順守することが大前提でした。
そもそも、なぜ猿たちが温泉に浸かるようになったのでしょうか?
地獄谷温泉にある一軒宿の後楽館のホームページによると、子ザルが宿の露天風呂に偶然入り、温泉に入ると気持ちが良いことを憶えてそれから好んで温泉に入るようになったそうです。
それにつられて周りの猿たちも温泉に入るようになり、以来、代々温泉に入るという行動が受け継がれているとのこと。
厳しい環境下において冬の寒さを凌ぐために彼らが身に付けた知恵だったようです。
公苑は朝8時半から夕方5時まで開いていますが、季節によっては猿たちが夕方早めに山へ帰ってしまったり、食べ物の収穫期や繁殖期などにはあまり公苑内に来ない時もあるようです。
人間が野生のニホンザルの生態を観察するために餌付けを試みて成功し、そしてニホンザルにとってここは餌が確実に手に入る場所となり、そこにたまたま温泉もあった。
そこがいつしか猿たちにとっては憩いの場の1つとなり、さらに足を踏み入れてくる大勢の人間たちと共存することも覚えた。
そこが人間にとっては、観光地になっていったという場所です。

地獄谷温泉野猿公苑を訪れたからこそ得られた感動
やっと目撃することができた温泉に浸かる猿たち、その仕草はとても人間に似ていて感動しました。
・温泉に浸かっては出て、また浸かっては出てを何度も繰り返す猿
・気持ちよさそうに目をつぶって「極楽、極楽」と言っているかのような猿
・ちょっと湯あたりしたのか、岩の上でぐったりして休んでいる猿
・母猿につかまりながらゆっくりゆっくり温泉に入る不安げな子猿
猿たちが温泉でくつろぐほのぼのとした光景を見て、幼い頃に家のお風呂が故障して家族で銭湯に行ったときのことを思い出しました。
公苑付近は気温が低くとても寒かったのですが、心温まるものがありました。
Sponsored Links
それにしても、地獄谷野猿公苑には外国人がなぜこんなにたくさんいるの?
群がる野生の猿の数にも驚きましたが、一方でここを訪れている外国人の数にも驚きました。
地獄谷野猿公苑は直接車では行けない人里離れた場所にあり、公共交通機関で来ようとしてもそれほど便利とは言えません。
なのに、どうして?
そもそも外国人にとっては野生の猿というのは熱帯地域のジャングルでバナナを食べているイメージが強く、「日本には雪降る中で温泉に浸かる猿がいるらしい」と耳にしても、どうしても信じられないのだそうです。
そんな雪山に暮らしているニホンザルたちはスノーモンキー(Snow Monkey)と呼ばれ、やがてSNSなどを通じてどんどん拡散されていきました。
果たしてこのスノーモンキー情報が事実なのかどうしても自分の目で確かめたくなり、ここを訪れる外国人が多いそうです。
はるばる地獄谷野猿公苑までやって来て気持ちよさそうに温泉に浸かるスノーモンキーを目の当たりにして、今までの常識が覆った状態で帰国するらしいのです。
私は多少であれば英語を聞き取ることができるのですが、公苑内でそばにいた外国人親子の会話に耳を傾けてみました。
「温泉から出た後、濡れた毛皮はどうやって乾かすのだろう?」
「湯冷めしたら死んでしまうのでは?」
「猿団子になって、お互いに温め合うんじゃないのか?」
みんな猿たちのことを心配していました。

地獄谷野猿公苑のまとめ
私自身、今まで野生の猿が温泉に入っているという映像はテレビ番組でたびたび見たことがありました。
それを今回直接目にすることができましたが、風景的には自分のイメージどおりでした。
しかし彼らが生息する奥地まで足を運んで直接眺めてみると、テレビの映像からは見えてこなかったさまざまなことを発見し、感動もひとしおでした。
本来野生動物のテリトリーであるエリアに足を踏み入れる緊張感は、日常生活ではなかなか味わえません。
また、現地を訪れたことで、野生動物がとにかく厳しい環境下で暮らしていることも強く感じました。
食料が不足して追い詰められた彼らが人里まで降りてきて人間が作った作物を奪ったり、人間に危害を加えたという悲しいニュースもよく耳にします。
宿泊した宿の方も、野生の猿による被害についておっしゃっていました。
お泊まりのお客さんをお部屋にお通ししたら、先に猿が部屋に侵入してのんびりお茶菓子を食べていたことがあったそうです。
人間対野生動物の戦いは、都会に暮らす私には想像以上のようです。
地獄谷温泉のスノーモンキーが世界的に有名になっていくことは歓迎すべきことなのでしょうが、この観光地を抱える地元の方々のいろいろなご苦労には頭が下がりました。
Sponsored Links